家族や同僚や仲のいい友達や自分のデーティングコーチ(笑)に正直かつ率直に自分の気持ちや思ったことを言うのは普通ですし、ほとんどの人は「正直であることはいいことである」というような価値観を、育つ過程で教えられます。
もちろん、正直であることは基本的にはいいことではあるのですが、常に「正直に」何でも自分の気持ちや思ったことを相手にぶつけていいかといったらそうではないわけです。
恋愛でいうと、「相手のためを思って」言ったつもりの批評やコメントがそれにあたります。
そもそも、私たちが相手について批評するとき、私たちは自分の正しさを100%信じています。
「彼は仕事の愚痴を言うのをやめるべきだ」
「彼女はボブよりロングヘアーの方が似合う」
こういうことを私たちが思うとき、私たちは自分たちの正しさを疑いません。
実際に、彼は仕事の愚痴を言うのをやめるべきかもしれませんし、彼女はロングヘアーの方が似合うかもしれません。
ただ、考えてみれば当たり前の真実ですが、完璧な人間はいないわけですから、私たち全員がどこかの要素で改善の余地があるわけです。
ただ、自分を改善するのは自分から始めるべき事で、ほぼ全く知らないと言っていい一回目や二回目のデートの相手に言われて始めることではないわけです。
つまり、「正直な」人の言っていることが間違っているというわけではなく、言われる側が頼んでもいないのにそんな「正直な」批評にさらされなくてはならないというところに問題があるわけです。
批評には生産的なものと非生産的な物がありますが、「頼んでもいないのに」「そんなに親しい仲でもないデート相手に」言われるものはほぼ全て非生産的なものにならざるを得ないのではないでしょうか。
なぜなら、言った側は「君のためを思って言っているだけだよ!」と弁解しますが、それは往々にして言った側のためであることが多いわけです(結果、理論上(笑)は相手のためにもなるにしても)。
「気になっていた男性と食事に言ったのですが、彼が食事の最中に、脈絡もなくいきなり「髪を伸ばした方がいいよ」と言ってきました。なんでそんなことを言われなくちゃいけないのかと不快に思い、楽しいはずの食事が一気につまらなくなりました」
「ある女性と初めてのデートに行ったんですが、少し遅れてしまった私に、彼女は「待ち合わせに遅れるような人間は大人として失格だ」と注意してきました。彼女の言っていることが間違っているというわけではなく、家族などに言われるならともかく、なんでろくに知らないデート相手にそんなことを言われなきゃいけないんだと思っていきなり冷めました」
上の二つの例は、私が実際に聞いた話です。女性は上の話、男性は下の話を読んで、「まあ、そうだろうな」と同意できるのではないでしょうか。
正直であることがいいことであるというのも、批評する側の言い分が正しいことも、確かにその通りなのですが、「だからといって言っていい事と悪い事がある」というのが人間関係、特に恋愛初期の黄金ルールではないでしょうか。
子供の頃に、親や先生に習った「自分が言われて嫌な事は、人に言わないこと」というベタな格言は大人になっても正しいというわけです。私はその格言にさらに「言おうか言うまいか迷ったら、言わないこと」というものを加えたいと思います。