「めぐり逢い」のケン、いい人の中のいい人

レオ・マッケリーの「めぐり逢い」(1957)を久しぶりに見ました。



この映画を観たことがある人も多いと思いますが、ケーリー・グラントとデボラ・カー主演のラブストーリーで、お互いに別の婚約者のいる二人が船上で出会い恋に落ち、エンパイア・ステート・ビルでの再開を約束するが、デボラ・カーが事故にあってしまいその約束が果たせず、すれ違ってしまう…というようなストーリーです。

序盤、初めてカーの船室に行くあたりの会話はなかなかいいですが、恋愛自体に関してはデーティング・コーチとして特筆しておくべきことはそこまでない作品です。

ただ、私の目を引いたのが、デボラ・カー演じるテリーの婚約者であるケンという男(リチャード・デニング)です。

ケンは、婚約者テリーをケーリー・グラントに取られるわけですが、テリーに振られた後も、ずっと彼女の事を思い続けます。

こっぴどく振られた後も(紳士的に)追いかけ、挙句の果てに他の男に会いに行く途中で事故にあったテリーに付き添い、励まし、「いつでもなんでも、必要だったら僕がいるよ」的な発言すらして、愛するテリーに尽くします。そして極めつけは、なんとテリーの恋の応援までする始末です。

……。

…もちろん、みなさんは最後どうなるか想像がつきますよね…

そうです、テリーはケーリー・グラントとくっつき、(映画的には)めでたしめでたしのハッピーエンドになるわけです。

観客は皆、ああよかったね、二人の誤解がとけて。ああよかったね、二人が幸せにくっついて。と思って映画館を後にすればいいかもしれませんが…

ケンはどうなるの!!! という話ですよ(笑)。

恐らく、あんなに紳士的にテリーの幸せを願うケンだから、紳士的に諦めて、紳士的に祝福して終わりだろう、という想像させるような感じにはなっていますが、これが現実だったらそうはいきません。

愛する女性をただ取られ、さらに他の男性を愛するその女性に献身して、そして一人ぽつんと取り残されるいい人。

悲しいかな、この映画はここの部分に関してはリアルです。いい人すぎる男はプレイボーイに負けるのです。そして現実では、二人がハッピーエンドになった後もケンの人生は容赦なく続くのです。

男性諸君…

他の男が好きな女性に一途に尽くすことで、彼女に振り向いてもらおうという作戦はほとんど成功しません。

ケンになってはいけませんよ…

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